2010年11月19日金曜日

Melkersson-Rosenthal症候群

Melkersson-Rosenthal症候群 (MRS)
1, 反復する顔面神経麻痺
2, 口唇の腫脹
3, 皺状舌(pilica tongue)

を3徴とする疾患、口唇の生検では肉芽腫形成が見られるため、病理学的にはcheilitis granulomatosaと診断される。

問題の症例は10年前から左右に複数回顔面神経麻痺をきたしていて、ステロイドなどて寛解している。
経過中には構音障害、顔面の三叉神経全領域の感覚障害も経験していて、4年前の入院では
サルコイドーシス、ヘルペス、VZV、ライム、血管炎、などの証拠はつかめていない。
lip biopsyでは慢性炎症性変化・・・。ステロイドで治療されて3年程度ほぼそれ以前の後遺症のみで経過していたが
最近2カ月頭痛、右外転神経麻痺が出現した。

頭痛は2ヶ月間増悪寛解なく持続する、前頭部中心の非拍動性で時折悪心と光過敏をともなう軽度~中等度のもので
脳神経以外には神経所見は異常なし。下唇が腫れていて、舌はほぼ正常、皮疹なし、頭部の毛髪が減少している。

さて。。。ほんとにMRSか??てとこから始めねばなりますまい。
頭痛も外転神経麻痺もMRSにともなってよいのかしら?MRSでないとしたら鑑別疾患は??

あら日本語の文献があったわー
◎ 臨床神経,39:1020-1024,1999

・頭痛はMRSの診断に重要な徴候である(J Allergy Clin Immunol 80:64-67.1987)
・家族例もみられる(この報告も家族例)
・MRSでは古典的3徴以外にも眼球運動障害、味覚障害、視力障害、痙攣発作などが指摘されている
 (J Allergy Clin Immunol 80:64-67.1987)
・しばしばクローン病を合併する(J clin Gastroenterol 18: 213-217.1994)
・オリゴクローナルバンドが陽性のこともある。

うーん 論文内にも書いてあるけどMRSと診断される症例の病因はおそらく単一ではないですな。
この論文を鵜呑みにすればこの症例もMRSと診断できそう。ご家族の舌とか奇形の有無とかを
お聞きしたいところ・・・。

決め打ちしないで多発脳神経麻痺と頭痛で検索すれば・・ むむ多い  あとまわし!

多発脳神経麻痺の自件例を979例!!集めた論文がありました。

◎Arch Neurol. 2005;62:1714-1717

原因としては腫瘍が一番多く(305)、血管障害(128)、外傷(128)、感染(102)、ギランバレー(62)
フィッシャー(29) 特発性海綿静脈洞炎(56)、外科手術合併症(54)、MS ADEM(54)
DM(25)、 と鑑別があがってます。

感染では 細菌性髄膜炎、結核性髄膜炎、クリプトコッカス、ヘルペス、ボツリヌス、mucormycosis(ケカビ症)
cysticercosis, 脳炎、梅毒、骨髄炎、AIDS、アスペルギルス

再発性多発脳神経麻痺は43 例( のべ136 神経)で,原因は順に糖尿病(14 例),特発性で自然寛解する良性例(14 例),特発性海綿静脈洞炎(10 例)という結果だった.脳神経の内訳は顔面神経,動眼神経,外転神経,三叉神経の順に多かった。


海綿静脈洞は造影されていなかったから海綿状脈洞炎ではない・・・と言えるのだろうか??
うーん調べてみよう。

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